2000/09/26
東京都衛生局長 今村 皓一 様

要  望  書

LD児の早期発見、早期療育の体制整備、生涯にわたる適切な援助を!!

平成12年9月26日

東京LD連絡会


 私たちは、東京での3つの会が連絡会を構成している「学習障害(LD)とその周辺児・者」を子供に持つ親の会であり、300名の会員を超えております。

 学習障害(LD)とは、全般的な知的発達には遅れはないが、読み書きなど特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す様々な障害を言い、背景として中枢神経系になんらかの機能障害があると推定されています。

 近年、LDとその周辺児についての理解と対策が叫ばれるとともに、社会的な認知も進み、具体的な施策も各地で展開しつつあります。

 東京都衛生局におかれましても、LD等の理解と啓発に向けた講座を研修会等のプログラムに加えていただく等の前向きな取り組みをしていただいており、誠に喜ばしいことと思います。

 しかし、LD児についての乳幼児からの子育て、療育、成人後に至るまでのケアについての情報の提供と場の確保については、医療、行政の施策がまだまだ不足していると感じております。

 発見の遅れと無理解による不適切な対応は、深刻な二次的障害を引き起こし、最近では社会的な問題とも捉えられております。

 早期発見と適切な育成の領域における今後の東京都衛生局の取り組みが、多くのLD児を救うものと思われます。

 厚生省では、平成4年度から学習障害研究班による研究をまとめ、毎年、厚生省心身障害研究の報告書に発表されています。

 研究ではLDに関しても、早期発見、早期療育の必要性、長期にわたるケアと追跡の有効性に言及されているところであり、東京都におかれましては、その研究成果を施策に十分生かしていただきたく、また、「東京都から変えていく」との意気込みでぜひ先導的かつ独自な取り組みを行っていただきますようお願い致します。

 つきましては、以下の事項を要望します。


1  乳幼児検診と相談における早期発見と早期介入

○ 発達の問題を指摘された幼児に対し、又はLDハイリスクとされた幼児に対し、療育をもれなく行って下さい。
 (たとえ後に正常とされても、療育は一般の幼児にも有効と考えます。)

○ 健康診断でのチェックにLD等の軽度の発達の問題のサインのわかる問診表を作成して、早期のピックアップに役立てて下さい。

○ 発達の問題のソフトなサイン(例えば転びやすいなど)についても、相談があったときは、丁寧な検査を行い科学的な対応をお願いします。

○ LDやADHD児のようないわゆる「育てにくい」子どもたちが幼児虐待の対象になっているとの指摘があります。未然に防ぐ意味でも、早期発見、早期介入を行って下さい。


2  幼児期に発達の問題を指摘された父母に対する子育て指導

○ 子育てに役立つ父母用のパンフレットを作成し、インフォームド・コンセントにも役立てて下さい。

○ 「パパママ教室」を開催し、LDハイリスク児を持つ父母に正しい知識を与えるなど子育ての支援をお願いします。
 (最近、社会的関心を集めている幼児虐待との関連もあり、早急の対応をお願いします。)

○ 幼児期に療育等の指導を受けたことのある児・者の発達の節ごとの検診によるフォローをお願いします。
 (例 : 7歳、9歳、12歳、15歳、20歳)


3  「東京発の医療改革」の核として、都立病院を積極的に改革
     〜 都立病院の小児科に発達相談室を 〜

○ 小児科医に相談したにもかかわらず、心配ないと言われた例が数多くあります。そこで精神科だけでなく、小児科に発達相談の窓口を設けて下さい。

○ 他の病気又は障害で病院の診療を受けていたにもかかわらず、かえってLDの発見が遅れた事例があります。重複するLDについてもフォローできるような体制作りをお願いします。


4  巡回指導員の派遣

○ 保育園等の幼児施設に巡回指導員を派遣し、入所児の集団行動や動作、コミュニケーションの観察を行って、早期の対応に役立てて下さい。


5  LD(ADHDを含む)の調査研究体制の充実

○ LDの研究とともに、LDとの重複が多く見られるADHDなどの対応についても適切な指導が行われますように、調査研究体制を充実してください。


6  関係機関との連携強化

○ 衛生局のみならず、福祉局、教育委員会、労働経済局その他関係機関とも十分連携を取られ、LD児・者に対する適切な援助が得られるようお願いします。


7  LD児に関する定期的な研修の実施

○ 母子保健サービスセンター等におけるLD児に関する研修を定期的に実施して下さい。


(質 問) 以上のほか、次の事項についても回答をお願いします。
  1. 衛生局における研修その他上記の事項に関する実績と今後の予定

  2. 計画中の「衛生局改革アクションプラン」におけるLDの位置づけ

  3. 「えすぽわーる」廃刊に伴う理解・啓発に関する代替措置

  4. 有害化学物質による環境汚染の、子どもの発達障害への影響に関する研究と対策についての取り組みと今後の予定

「東京LD連絡会」加盟3団体


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