2001/07/29

東京都教育委員会教育長宛要望書

東京LD連絡会 2001.7.27


平成13年7月27日
東京都教育委員会教育長 横山洋吉殿
東京LD連絡会

要 望 書

 私たち、東京LD連絡会は、都内の3つの親の会(「けやき」、「にんじん村」、「くじら」)で構成し、約300名の会員がそれぞれの親の会の地域を中心に活動しています。私たちは、「学習障害(LD)及びその周辺児・者」(以下LD児と略す)の親の会として、LDに関する東京都などへの要請は「東京LD連絡会」として共に行動しています。

 東京都におかれましては、平成12年1月に学習障害(LD)児等の理解と指導のため、公立、小・中・高・盲・聾・養学校(園)の全ての教職員(約6万名)に、「学習障害(LD)児等について理解を深めましょう」のリーフレットを配布されたことは、LD児に対する具体的施策の更なる一歩と捉え、私たちにとって大きな前進であると考えております。

 平成13年1月の、文部科学省「21世紀の特殊教育の在り方について」の報告の中にLD・ADHDの項目が盛り込まれましたことについても、LD児理解の更なる前進と受け止めております。また、報告の中に幾度か教育・福祉・医療の連携が述べられていることは、今後、関係分野の方々が一層連携して、LD児の具体的対応に向けて取り組んでいただけるものと願っております。

 しかし一方では、パンフレット・指導資料集などの配布や講習会の開催など、LD児に対する様々な取り組みがなされているにも関わらず、実際の教育現場では校長先生をはじめとする先生方の理解は今ひとつ進んでいないようです。

 LD児の出現率は数パーセントと、総児童生徒数に比べて決して少ない人数ではありません。また、そのうちの多くのLD児が、無理解な環境の中で、適切な対応を得られず不適応を起こし、不登校・非行・ひきこもり・無気力等の二次障害、更には就職できないための在宅等を余儀なくされ苦しんでいるのが現状です。また、無理解による「いじめ」は後を断ちません。

 LD児の多くは、適切な教育と援助を受けることにより、充実した学校生活を過すことが十分可能であり、それによって、将来を生き抜く力を獲得することができると考えております。

 私たちは、教育現場でのLD児の正しい理解が深まり、適切な教育・援助体制が充実されることを求めて次のように要望します。

要望事項

1. 研 修

(1) 各学校に対してLD児の理解・啓発及び指導集等の資料を活用した校内研修を行うよう指導してください。また、校内のメンバーの他にLD児を持つ保護者を加えることが、指導される側と、指導する側の共通理解をはかるうえで不可欠なことと思います。

 配布された資料を有効に活用されていない学校が多いようです

(2) 区市町村からの要望に応じて、東京都教職員研修センターで実施されている学校教育相談研修のスクールカウンセラー研修では、中級・上級者研修でLD児の指導の実例研修を実践されているとのことですが、この実例研修を初級者研修にも、また要望のあるなしに係わらず実践してください。

(3) 区市立小、中学校の養護教諭にLD児の理解・指導の研修をしてください。

 LD児の中には、勉強についていけないことや、いじめを受けることなどにより、保健室登校をする子どもたちが多くいます。

(4) 東京都教職員研修センターでの、小・中学校通常学級の教師対象研修にLD児の理解と指導法に関する内容を導入していただきましたが、通常学級の先生方の参加が少ないようです。できるだけ多くの教師が参加できるように管理職が配慮していただけるよう指導してください。

 LD児の多くは通常の学級に在籍しているにもかかわらず、心身障害教育と思っている管理職や教師がいまだに多いようです。この点が改善されることを願っています。

2. 指導者・専門教師の配置や養成

(1) LD概論・アセスメント・指導・コンサルテーションの各領域において、専門的な指導ができる通常教育担当の指導主事の養成を早急に行ってください。

 通常教育の教師に対する専門的な指導のできる指導主事が少数しかおりません。

(2) 心理教育査定や個別指導計画の作成にあたってLD児の認知特性からの専門的アドバイスなど、教師へのコンサルテーションができる学校心理士(スクールサイコロジスト)の配置や養成を早急に行ってください。また、日本教育心理学会で認定されたスクールサイコロジストを区市町村に配置してください。

(3) LD児の特性に合わせた、適切な指導ができる教師が少ないので、早急に教師に対して、それぞれの子どものニーズを把握することができるよう研修と指導をしてください。また、LD児に適切な指導ができる専門教師を養成するシステムやネットワークを確立してください。

3. 個別指導計画の導入

(1) 通常学級において、個別指導計画をすすめる研究指定校を設け、早急にLD児の教育に導入できるようにしてください。

 すでに実践をして、成果をあげている学校もあります。

(2) 個別指導計画作成の過程で保護者の意見を取りいれるだけではなく、医者や学校心理学者等の専門家がメンバーとして参加できるようにしてください。

(3) 各LD児の理解の状況に応じて、特に中学校、高等学校では将来の社会的自立を念頭に置き、社会生活を営む上で必要なスキルを身につけられるような個別の移行プログラムを個別指導計画に位置づけるよう検討してください。

4. 教員の加配

(1) LD児に適切な指導ができるチームティーチングを増やして、LD児への指導を進めてください。

(2) 小学校の通常学級に、担任の他に1人の副担任制を導入してください。

 実施を計画している自治体もあります。

5. LDの研究・相談事業

(1) オープンルームを設け、その成果をLD児の教育に導入してください。

(2) 杉並区立中瀬中学校や三鷹市の実績を生かして、それをLD児への教育・指導相談並びに保護者やLD児が相談ができる体制を充実させてください。

6. LD児への教育環境

(1) 30人学級もしくは、学級定員の見直しをしてください。

(2) 通常学級の授業時やテスト時にLDの特性を踏まえた特別な配慮をしてください

 たとえば、書字障害がある場合、答えがわかっていても、漢字で書かなければ点数にならない状況があります。問題を見るだけでは理解できない場合、文章題を読んでもらえば、答えを導く事ができる子どももいます。計算障害のある場合は、簡単な計算問題を解く時から、電卓の使用で、答えが導けます。

 上記のような配慮が得られない場合、低得点の結果しかでないことが、学習意欲の減退につながります。

(3) すべての公立学校において、障害児との交流会をもつように指導してください。

 世の中には、色々な人がいることを感じ取ることにより、心の優しさを促すような教育が必要と思います。

(4) LD児には、体験的学習が不可欠であると考えています。2002年度に導入される「総合的な学習」の中に体験学習を多く取り入れてください。

7. 義務教育終了後の進路

(1) チャレンジスクールにLD児を指導できる専門教師を配置してください。

 LD児の高等学校進学に関しては、選択肢が少なく、たとえ入学できても生徒のニーズからはほど遠い環境であることが多く、本人も親も最も苦しむところです。

(2) 南大沢学園養護学校に設置された高等部産業技術科や、青鳥養護学校に設置された都市園芸科のように、LD児にも適した職業教育のコースを全都に設置してください。

8. 多くのLD児たちが抱える困難は、生涯にわたるものと考えられています。
 福祉局衛生局・労働経済局・その他関係諸機関とも充分連携をとられ、適切な教育的援助が得られますようご検討ください。

<質問事項> --------------------------

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「東京LD連絡会」加盟3団体


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