1999/07/27

東京都教育委員会教育長宛要望書

東京LD連絡会

1999.7.16


東京都教育委員会教育長
              中 島 元 彦 殿
                                                      平成11年7月16日

                                                          東京LD連絡会

                            要 望 書

私たち、東京LD連絡会は、都内の3つの親の会で構成され、約250名の会員が各地域で活
動しています。

私たちは、「LD及びその周辺児・者」(以下LD児と略す)の親の会として、東京都にお
けるLDに関する行政などへの働きかけを中心に、共通の事柄について、「東京LD連絡会」
として、共に行動しています。

近年、LD児についてその理解と対策が叫ばれ、東京都におかれましては、文部省に先駆
け平成7年7月にLD児の理解・啓発のためのパンフレット「学習障害児等に関する理解と
指導について」をすべての公立学校(園)に配布してくださり、又、教員を対象に「学
習障害(LD)児等に対する理解と指導に関する講習会」を開催くださいましたことは、
LD児の具体的な施策の一歩ととらえ大きな前進であると考えております。

こうした背景もあって、第15期中央教育審議会の答申の中に、学習障害児(LD児)に対
する指導内容、方法策についての研究の促進の必要性が折り込まれたのを始め、平成10
年7月の教育課程審議会答申に学習障害児(LD児)への対応が明記されたことは、大変
意義のあることと評価したいと思います。又、過日、学習障害及びこれに類似する学習
上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議から「学習障害児に
対する指導について」報告がなされたことはご承知のとおりです。

しかし、パンフレット・指導資料集等の配布や講習会の開催などLD児に対する様々な取
り組みが成されているのにも関わらず、校長先生や現場の先生方の理解は今ひとつ進ん
でいないようです。

出現率は数パーセントと、総児童生徒数に比すると決して少ない人数ではなく、その内
の多くのLD児が、そのような環境の中で適切な対応を得られず不適応をおこし、二次障
害として、不登校・家庭内暴力・非行・ひきこもり・無気力・及び職を得られないため
の在宅等をひきおこして苦しんでおります。又、無理解による「いじめ」は後を経ちま
せん。

LD児の多くは、適切な教育と援助により、充実した学校生活を過ごし、将来を生き抜く
力を獲得することができると考えております。

私たちはLD児の正しい理解と適切な教育・援助を求めて次のように要望します。

      ----------- 要望事項 -----------

1.指導書の作成

LD児の適切な育成には、その教育の両輪ともいえます教科学習能力と社会的適応性に係
わる能力の両面からの教育的アプローチが必要不可欠と思われます。学習障害に伴う形
で現れることもあるとされている「行動上の自己調整、対人関係などにおける問題」を
克服することが、社会的適応性に係わる能力を身につけることにつながるものと考え、
この点を充分に留意した指導内容、方法をまとめた指導書を今後も作成してください。

2.パンフレット・指導集等資料の配布

(1) LD児の理解・啓発及び指導集等の資料がすべての公立学校(園)の全教師に行渡る
    ようにしてください。

* 親の会の実態調査では配布された資料を残念なことに知らない管理職の方もいらっ
   しゃいました。

3.研 修

(1) 東京都立教育研究所、多摩教育研究所における小・中学校通常学級の教師対象の研
    修にLD児の理解と指導法に関する内容を導入してください。又、できるだけ多くの
    教師が参加できるように管理職が配慮するよう指導してください。

* LD児の多くは通常の学級に在籍しているにもかかわらず、心身障害教育と思ってい
   る教師が多いようです。

(2) 研修に強制力がない為、ごく一部の教師にしか、研修が行われていないので、必須
    の研修に、LDのプログラムを組み込んでください。

(3) スクールカウンセラーの研修の初級・中級・上級全てにLD児の理解と指導法に関す
    るものを導入してください。

(3) 各学校にLD児の理解・啓発及び指導集等資料を活用した校内研修を行うよう指導し
    てください。

* 配布された資料を有効に活用されていない学校が多いようです

4.指導者・専門教師の養成 

(1) LD概論・アセスメント・指導・コンサルティションの各領域において、専門的な指
    導ができる指導主事の養成を早急に行ってください。

* 専門的な指導のできる指導主事が少数しかおりません。

(2) 心理教育査定や個別指導計画の作成にあたってLD児の認知特性からの専門的アドバ
    イスなど、教師へのコンサルティションができる学校心理士(スクールサイコロジ
    スト)の養成を早急に行ってください。

(3) 情緒障害学級・相談学級の教師を核に専門教師の養成を早急に行ってください。 

5.個別指導計画の導入

(1) 通常学級において、個別指導計画をすすめる研究指定校を設け、早急にLD児の教育
    に導入できるようにしてください。

(2) 個別指導計画作成の過程で保護者の意見を取りいれるだけではなく、学校心理士等
    の専門家もメンバーとして参加できるようにしてください。

(3) 各LD児の理解の状況に応じて、中学生頃から学校教育が終わるまでの間、将来の社
    会的自立を念頭に置いた社会生活を営む上で必要なスキルを身につけるような個別
    の移行プログラムを個別指導計画に位置づけるよう検討してください。

6.LDの研究事業

(1) 特別学習指導室(リソースルーム)の研究指定校を設け、LD児の教育に導入できる
    ようにしてください。

7.LD児指導相談事業

(1) 世田谷区の桜木中学校や三鷹市の実績を生かして、指導相談事業を各区市町村に積
    極的に導入してください。

(2) 各学校に、スクールカウンセラーを配置して、保護者、LD児が相談できるよう、体
    制を充実させてください。

8.教員の加配

(1) チームティーチングをさらに増やして、LD児の指導を進めてください。

(2) 世田谷区の桜木中学校に設置されている通級指導学級(通称「ひろば学級」)は、
    平成8〜9年度に文部省の学習障害研究校として、情緒と学習障害の2種類の学級編
    制で教員加配をしていただいておりましたが、平成10年からは加配が行われずクラ
    ス分けによる十分な運営ができなくなっております。東京都としての研究校にして
    いただき、平成12年から教員を増やしてなお一層、LDの指導についての実績と研究
    が行われますようにお願いいたします。

9.アドバイザリースタッフ派遣事業

(1) いじめ、登校拒否(不登校)等の問題の解決に資するため、だけではなく、LD児が
    かかえる、様々な問題の解決も派遣事業の対象にしてください。

* LD児の多くは、その特性ゆえ、「いじめ」や「不登校」に深く関係しております。

10.義務教育終了後の進路

(1) LD児の高等学校進学に関しては、選択肢が少なく、たとえ入学できても生徒のニー
    ズからは程遠い環境であることのほうが多く最も苦しむところです。都立高校にLD
    児の受け入れ枠を用意してください。又、チャレンジスクールにLD児を指導できる
    専門教師を配置してください。

(2) 南大沢学園養護学校に設置された、高等部産業技術科や、青鳥養護学校に設置され
    た都市園芸科のようなLD児に適した職業教育のコースを全都に計画的に設置してく
    ださい。

11.昭島市等で、LD及び情緒障害児を対象とした、通級指導学級の設置を検討しており
    ますが、このような動きに、都としても積極的な支援をお願いいたします。

12.多くのLD児が抱える困難は、生涯にわたるものと考えられています。福祉局衛生局
    ・労働経済局・その他関係諸機関とも充分連携をとられ、適切な教育的援助が得ら
    れますようご検討ください。

質問

◇ 学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査
   ・研究協力者会議から出された、報告を踏まえての今後の方針をお聞かせください。
   (校内委員会・専門家チームのメンバーについて・周辺児への指導についてetc)

◇ 昨年度と今年度の取り組みについてお聞かせください。

◇ 学級定員について現状と、今後の方針をお聞かせください。

◇ 他関係諸機関との連携の実績をお聞かせください。


                                              「東京LD連絡会」加盟3団体

                                        * 全国LD(学習障害)親の会会員
                                          LD親の会「けやき」

                                        * 全国LD(学習障害)親の会会員
                                         「にんじん村」

                                        * 全国LD(学習障害)親の会会員
                                          LD児・者を考える会「くじら」

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