東京都教育委員会教育長宛要望書

2003年8月6日 東京LD親の会連絡会


平成15年8月6日
東京都教育委員会教育長 横山 洋吉 殿

東京LD親の会連絡会

要 望 書

私たち、「東京LD親の会連絡会」は、都内の4つの親の会(「けやき」、「にんじん村」、「くじら」、「パルレ」)で構成し、約200名の会員がそれぞれの親の会の地域を中心に活動しています。

私たちは、「学習障害(LD)及びその周辺児・者(以下LDとする)の親の会として、各会の独自性を尊重し、LDの社会的理解、支援を求め東京都におけるLDに関する行政などへの働きかけ、あるいは共通の事柄等について「東京LD親の会連絡会」として統一行動をしています。

昨年10月に、文部科学省の特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議が、「今後の特別支援教育の在り方について(中間のまとめ)」を発表したことを受けて、これまでに講演会「教室の中の気になる子どもたち〜東京都における特別支援教育について〜」を都内2カ所で開催(昨年末、7月)し、特別支援教育への理解を求めました。この講演会では、東京都教育庁指導部の特別支援教育ご担当の主任指導主事にもご講演いただき、私たち会員一同、感謝しております。また、東京都教育庁のご協力を頂いた親の会による講演会に、教育関係者や保護者などから画期的であるとの好評を頂きました。

本年3月には上記協力者会議が最終報告を発表し、特別支援教育の具体的取り組みを提言しています。東京都におかれましても、特別支援教育への具体的な取り組みを検討されていると伺っており、私共親の会としてもその実現に大きな期待を寄せております。しかし、現実の教育現場では、モデル校を除いて、以前と変わりない状況が続いております。

私たち東京LD親の会連絡会は、すべての教育現場で真の効果的な「特別支援教育」が早期に実施されるよう、次のように要望します。

1. 特別支援教育実現のための条件整備
(1) 教育関係者、都民に対する「特別支援教育」の正しい理解・啓発を早急にお願いします。

私どもの特別支援教育の講演会においても、今後の取組について高い関心が伺えると同時に、その実現に対する心配・不安、更には実現そのものを否定する意見等があり、混乱が見られ始めています。「特別支援教育」の正しい理解・啓発を早急にお願いします。

(2) 校長、教頭の特別支援教育に対する意識改革の促進をお願いします。

特に、教頭・校長試験の中に、LD等についての基本的知識と、障害 に対する認識を問う問題を盛込むことを要望します。

(3) すべての小中学校に、通常の学級に在席しているLD等の児童・生徒が指導を受けたり、相談したりすることのできる特別支援教室を設置して、各個人のニーズに応じた教育が行えるよう指導してください。

その教室では、特別支援学級(現在の固定の心身障害学級)との効果的連携により、心理の専門家等による巡回指導相談等が実施されることが望まれます。同教室の充実のためには、他県の先駆け導入したティーチング・アシスタント制度の一層の充実、その活用も必要と考えます。

(4) エリアネットワークにおける支援の充実のための校外との連絡調整、また校内において一人一人のニーズに合った教育をアレンジすることのできる特別支援教育コーディネータ(発達や障害全般に関する一般的知識及びカウンセリングマインドを有する者)を各校に配置するよう指導してください。

2. 特別支援教育の理解(専門性の向上)
(1) 希望する全ての教職員が参加できる規模、頻度で「特別支援教育」に関する研修会を開催してください。

(2) また、上記研修会には保護者も参加できるようにしてください。

(3) 区市町村の学校又は、教職員が相談、活用している学校研修センター等も特別支援教育の推進に参画、協力するようお取り計らいお願いします。

(4) 現在3割程度の特殊教育教諭免許状の取得者を増加するため、取得者の処遇を引き上げる等何らかの工夫を講じるようご検討下さい。

3. 特別支援教育実現の促進
(1) 校内委員会の立ち上げを実現、推進するため各小中学校を指導、支援してください。

(2) 学校カウンセラーなどの現在ある人材を活用して、各市町村が専門委員会を立ちあげるよう指導してください。

(3) 東京都教育委委員会から人材を派遣する、養成する等、専門委員会や巡回相談などの立ちあげに必要な支援を行ってください。

(4) 各小中学校での特別支援教室を設置するよう各区市町村の教育委員会にも働きかけてください。現状の教員では対応が間に合わない場合には、教員とは別枠でアドバイザーを採用し、特別支援教室の充実を図るよう区市町村の教育委員会と検討を進めて下さい。

(5) 教職員志望の大学生、保護者などのボランティアの導入も視野に入れてください。

(6) 平成15年度の特別支援教育推進体制モデル事業において、東京都は墨田区の42校、稲城市の17校が指定されていますが、これは都内全公立小中校の2.9%に過ぎません。

他県(青森、秋田)では100%の指定を行っているところもありますが、東京都としては特別支援教育の推進体制の都内全域への拡大に向けて、どのようタイム・スケジュールで取組む予定であるのか、計画をお示し下さい。

(7) LD等のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに対して質の高い教育をより効果的に推進するため、研修会、研究会等のいろいろな場面、都、市区町村のいろいろな段階で親の会、関係NPOとの連携協力が図られるよう、お取り計らいお願いします。

4. 個別支援計画
(1) 「今後の特別支援教育の在り方について(中間のまとめ)」にもうたわれているように就学前から就労まで、教育、福祉、医療、労働等が一体となった個人への支援体制が確立できるよう東京都での調整を進めるとともに区市町村を指導、支援してください。

(2) 中学校の特殊学級に通学する生徒の中には、普通高校への進学を希望しても、条件が整わず、学力不足という問題以外のことのため、進学できない場合がありますが、このようなことのないよう運用の改善がなされるよう現場の指導をお願いします。

(3) 入学試験も含めて小学校から大学まで試験について、時間の延長、問題などの文章の読み上げ(言語性LD対象)などの特別な措置が取られるようにしてください。

(4) 幼児から学校を卒業して成人になるまでの教育計画となる「個別の教育支援計画」が作成されることが望まれます。同支援計画を実際に使って児童・生徒を指導するには、まだその具体的な内容が確立されていないように思いますが、そのような自立活動の指導、職業に関する指導等の確立のため、青鳥養護学校を中心に実施された「就業支援に関する実践研究事業」の成果の普及、一層の充実を図るようお願いします。

(5) 乳幼児期から学校卒業までの一貫した相談支援体制を形成するための「特別支援プロジェクト」の早急な実施、実現をお願いします。

5. LD等に対する、社会的理解の向上
LD等に対する教育的支援を定着させていくためには、一般の児童・生徒や保護者の理解向上が不可欠です。そのための啓発活動が推進されるよう、下記のような取組みの実施をお願いします。

(1) 一般の人を対象とした心のバリアフリー講座、シンポジウムの開催

(2) リーフレットやビデオ等の作成、配布
[1] 一般の保護者に対する理解啓発

小学校に入学する児童の保護者全員に、LD等も含めた障害児全般に対する理解啓発のためのリーフレットを配布をお願いします。

[2] 一般の児童・生徒の理解向上

小学校高学年および、中学、高校の生徒向けの、LD等も含めた障害児全般に対する理解啓発のためのビデオ、冊子の作成・配布をお願いします。

私たち、東京LD親の会連絡会は、特別支援教育の早期実現、推進のために都及び区市町村への全面的な協力を行います。


質 問

1. 東京都における特別支援教育への具体的な取り組みの現状、及び今後の取り組み

2. 東京都と区市町村の特別支援教育に関する具体的な支援、連携

3. 最終報告では特別支援教育の実現については親の会,NPOとの協力、連携が必要としているが、東京都における具体的な取り組みは?

「東京LD親の会連絡会」加盟4団体

全国LD(学習障害)親の会会員 LD(学習障害)親の会「けやき」
 「にんじん村」
 LD児・者を考える会「くじら」
 青少年育成・自立支援の会「パルレ」

前に戻る
inserted by FC2 system