2004/08/24

東京都知事宛 要望書

東京 LD 親の会 連絡会

[ 回答書は こちら ]

平成16年 8月 24日

東京都知事 石原 慎太郎 殿
東京 LD 親の会連絡会

要 望 書

私たち、「東京LD親の会連絡会」は、LD(学習障害)及びその周辺児・者(以下LDとする)の4つの親の会(「けやき」、「にんじん村」、「パルレ」、「くじら」)で構成され、約200名の会員がそれぞれの親の会の地域を中心に活動しています。

平成14年度から、東京都教育委員会のご後援及び、指導部特別支援教育ご担当のご協力を頂き、講演会「教室の中の気になる子どもたち〜東京都における特別支援教育について〜」を都内各所で開催し、特別支援教育への理解・啓発に努めてきました。

LDを含む、いわゆる軽度発達障害につきましては、昨今のマスコミの報道などから関心が高まりつつありますが、未だ社会的認知は十分ではありません。文部科学省の調査では、普通学級に在籍している児童のうち、6.3%が何らかの支援が必要であるとの結果がでております。成人に達したこれらの軽度発達障害を持つ人たちが、自立できずに福祉の援助を受ける側に回るのか、それとも自立した生活を営んで納税者になるのか、長期的な視野にたった行政的判断が求められるところであります。

 私ども親の会が目指すところは、子供たちが自立した生活を送り、納税などの社会的責任を果たすことができるようになることです。そのためには教育の面だけでなく、就職・地域社会への参加などの場面におきましても、的確な支援を必要としております。

私ども「東京LD親の会連絡会」は、軽度発達障害児・者の自立支援のため、以下の項目につきまして要望いたします。

【 厚 生 関 係 】

1. 早期発見・早期治療のための実施体制の確立
(1) 早期発見のための取り組みの強化
現在実施されている検診に加え、5歳児検診の実施を要望します。また、実施に向けて、東京都として国への働きかけを要望します。
(2) 早期療育の充実
軽度発達障害のある児童は、社会性の発達のための療育、ソーシャルスキルトレーニングの効果が顕著です。各区市に1箇所は、療育を受けられる機関の設置を要望します。
(3) 拡大母子手帳等
生涯を通した相談・支援などに利用できる成育記録・相談記録の作成を検討してください。
(4) 保育所・保育園・幼稚園との連携・児童相談所の業務との関係
軽度発達障害児は大変に育てにくく、ともすると虐待に近い対応をしてしまう恐れがあります。こうした事態にならないよう、各機関との連携を密に取っていただきますようお願い致します。
(5) 学校との連携
特別支援教育におきまして、地域の関係所機関と学校との連携が大変重要になってきます。地域の医療機関・保健所・相談機関・民間の療育機関などと、各学校の校内委員会との連携を密にとって頂きますよう要望します。
2. 専門医師の養成や保健師等関係者に対する理解と啓発
(1) 専門の医師の養成
専門の医師が少ないため、診断を受けるためには数ヶ月も待たなければならない状況にあります。専門医の養成を早急に行うよう要望します。また専門医の養成を、国へ働きかけてください。
(2) 臨床心理士等の医療専門職、保健士等関係者に対する理解と啓発
臨床心理士・保健士の方々への、軽度発達障害についての理解促進のため、研修などを充実させ、体系的な知識を学ぶように指導して下さい。
3. 保育所・保育園における適切な対応
(1) 保育士に対する専門性の向上と支援体制の整備
保育士の方々が、軽度発達障害についての知識、対応法などを学ぶ事が出来るよう、勤務体制などの配慮をして下さい。
4. 診断・療育の相談窓口としての医療機関の拡充
(1) 療育機関、保育所、保育園、幼稚園、小学校、中学校との連携
医療機関を受診した場合、単に診断書の提出にとどまらず、その後の対応方法など、医師の助言・アドバイスを、教育関係者に直接伝える事が出来るようにして下さい。
5. 成人のための相談体制の整備
(1) 医療・保健、福祉機関にたいする理解と啓発
相談業務の担当職員に、軽度発達障害についての知識・理解を促進するよう、研修などを実施して下さい。
(2) 東京都自閉症・発達障害者支援センター
東京都自閉症・発達障害者支援センターが、成人の相談を受けていますが、1千万都民に対して、職員は4名です。各区市には一カ所、成人のための相談機関の設置を要望します。
6. 一生涯を通じた支援体制の確立(関係行政機関、区市町村との連携の強化)
(1) 雇用支援機関との連携
区市町村障害者就労支援事業におきまして、就労支援と生活支援をトータルに結びつけるコーディネーターの配置が検討されております。これは重要な視点ですので、今後とも強力に推進していただくよう要望します。
(2) 区市町村との連携
発達障害者支援センターは東京都に一カ所ですが、各区市にも、一カ所は設置し、一生涯を通じた支援体制を確立して下さい。

【 労 働 関 係 】

1. 職業教育の充実と求職活動への準備段階における支援
(1) 個別移行支援計画
普通級に通学している生徒の職業教育についても、軽度発達障害児については特別な支援が必要です。在籍時からの職業教育とともに、就労へ向けての個別移行支援計画を策定し、実習・訓練・トライアルなどができるように、教育機関との連携を計ってください。
2. 相談体制の整備と多様かつ効果的な職業訓練、職場実習制度の充実
(1) 公共職業安定所におけるきめ細かな相談と関係機関との連携

(2) 地域障害者職業センターでの職業リハビリテーションの充実

(2) 区市単位の障害者能力開発施設の設置

(3) 公立職業能力開発施設での職業訓練の拡充

(4) 多様なニーズに対応した委託訓練の拡充

[1] 委託訓練対象者数

[2] 障害者職業訓練コーディネーター

(5) 職域拡大のための訓練カリキュラムの開発
3. 雇用機会の拡大
(1) 「障害者試行雇用事業」の拡充促進
[1] 対象人数の拡大

[2] 職場実習制度の事業化

(2) 若年者トライアル雇用

(3) 東京都障害者職業センターにおける職場適応援助者(ジョブコーチ)事業の充実

[1] ジョブコーチの増員

[2] 他機関との連携による継続的な支援

4. 就業・生活支援事業の拡充と整備
(1) 障害者就業・生活支援センターの拡充と一体的支援の充実
軽度発達障害者は、障害認定を受けられない人が半数以上います。それらの方々の支援機関として、どこが対応するのか、明確にして下さい。発達障害者支援センターが、これら就労・生活支援も含めて行っていくよう要望します。
(2) 区市町村障害者就労支援事業への取り組みについて
現在行われております、区市町村障害者就労支援事業につきましては、障害者にとって大変に有効な事業であると、高く評価致しております。しかし、私ども親の会が調査致しましたところ、各区によって、取り組みに大きな差が有ることが認められました。また、軽度発達障害についても、理解のあるところと、ないところと差がございます。この事業をさらに有効に実施していくためにも、以下の事について要望致します。
[1] 支援対象者に、軽度発達障害者を加えてください。

[2] 区市によって、取り組みに差がないように、指導・助言を行ってください。

5. 雇用・就業関係機関職員や事業所に対する理解と啓発事業の充実
(1) 障害者雇用ガイドブックへの掲載(軽度発達障害について)

(2) 雇用・就業関係機関職員に対する研修の充実

(3) 事業所に対する理解と啓発

地域における就労支援ネットワークの整備に関して、民間の事業主・商店会などの方に、軽度発達障害についての啓発(講演会・学習会など)を行ってください。
6. 公的支援の実施
(1) 雇用率のカウント
軽度発達障害者を雇用率のカウントに加えて下さい。職業訓練などの支援を受けても、雇用率の対象となっていないと、最終的な雇用の実現が困難であるのが実態です。この点もぜひご賢察をお願いします。
(2) 各種助成金
軽度発達障害者雇用に関する事業を実施している団体等に、助成金を配布して下さい。
7. 公的機関における雇用の促進
東京都・各区市町村の公共機関・財団における軽度発達障害者の雇用率を算定し、雇用を促進するよう要望します。
8. 一生涯を通じた支援体制の確立(関係行政機関、区市町村との連携の強化)
就労支援機関の利用について、居住区のみではなく、交通機関などから隣接区なども合わせて利用できるように、連絡調整を行って下さい。行政の縦割りを排除し、関係機関(福祉・教育・保健)との連携を密にとって下さい。

「東京LD親の会連絡会」 加盟4団体
全国LD(学習障害)親の会会員
LD(学習障害) 親の会 「けやき」

 同
「にんじん村」

 同
LD児・者を考える会 「くじら」

 同
青少年育成・自立支援の会 「パルレ」


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